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運命

運命というものは

つながりのためだけにあるわけではなく

ただすれ違う時にも存在する。

ようである。

 

僕が西宮市高木東町で過ごしたのは

小学校3年生の夏から4年生の夏までのたった1年間。

兄は甲子園でプラカード持ちをする市立西宮高校に通い、

僕は高木小学校に通っていた。

家は阪急西宮北口駅の東側にある車両基地の近くの借家で

正面には田んぼの広がる小さいながらものんびりした家だった。

そんな我が家のとなりが偶然同じ苗字のおうちで、

反対隣りは森さんというから

郵便屋さん泣かせの3軒。

そのおなじ苗字のお宅にヤコがいて

僕は偶然にもヤコのクラスに転校したのだ。

中学年の小学生だから外遊び好きで

クラスメートの近所さん、佐子君や五反田君といつもつるんでいたが、

おとなりのヤコともすぐ仲良くなって

彼女の部屋にもよく遊びに行った。

学校でもふたりだけでリコーダーの演奏をしたりして

まるで昔からの幼馴染のようだった。

しかし、父への転勤命令で僕ら家族は北海道に行くことになり、

それまで数度の引っ越しに慣れているはずの僕は

ヤコ達の家族に見送られて西宮を去る時

はじめてボロボロに泣いたのを今でも覚えている。

そんなヤコとは一年に二三度の手紙をやり取りする文通を続けていた。

そして中学に上がった時、

彼女が西宮でも山の手にあたる甲陽園あたりに家を新築して移ったことが書いてあった。

新しく通っている苦楽園中学校では吹奏楽部でフルートを吹いていることと。

そんななか、中学二年の夏に札幌の八軒に住んでいた僕は父が新しい家を購入したので同じ市内の平岸に移ることになった。

転校先の平岸中学校では

僕も八軒中学校の二年から吹奏楽部でパーカッションをはじめていたので、迷わず吹奏楽部に入った。

平中の吹奏楽部に限らないだろうが、

吹奏楽部の連中は音楽準備室にたまることが多い。僕もその範疇のひとりで、

クラスメートと遊ぶ日以外の放課後には音楽準備室にいつもいた。

そんなある日

アルトサックスの書記局長が僕の帽子を拾い上げて驚きの声をあげた。

当時まだ中学生は学生帽をかぶっており

僕は兄のかぶっていたメイドイン西宮の帽子をかぶっていた。

局長がおどろいたのは

彼女もまた西宮出身だったのだ。

美人で書記局長で西宮出身の彼女。

彼女会いたさに準備室通いはますます増えた。

何度か話していくうちに

実は彼女も苦楽園中から転校してきていてしかも吹奏楽部なうえに

時期的にヤコとの入れ替わりで北海道にやってきたのだった。

運命を感じざるを得ない瞬間である。

それからも彼女は「見せて、ちょさせて、触らせて」と、

西宮を感じることのできる僕の帽子めあてに僕のところに来てくれる。

僕は下手な彼女をモチーフにしたイラストを何枚も描き、彼女に渡し続け、

いつしか恋心を抱くようになった。

しかし幼かった。

何をすればよいかわからなかった。

面白がったクラスメートの推薦で僕は書紀にされたが、

書紀局の集まりでもなにもできなかった。

大きな何かが運命で連れてきてくれた局長。

その後もさらに近付くことなく。

ところが、新しい何かが起こってしまった。

クラリネットのかっちゃんが

あろうことか僕の家の向かいに家を建てて引っ越してきたのだ。

すみません。かっちゃんも体は大きいけど

えくぼのかわいい女子でした。

自然とかっちゃんと一緒に帰る日が多くなり、

ある日の事、クラスの男子に言い寄られたかっちゃんが

「だってはよし君がいるもん!」ととんでもないことをのたまってくれたのである。

これは最上級に男としてうれしいことである。

しかし、局長を好きな僕としてはとんでもなく迷惑なことである。

というか怯えてしまった。

それは僕のクラスメートから聞いたことで、

すでに全クラスに広まっていたのである。

当時は一学年10クラス。

450人にである。(言い過ぎか。興味のない奴には関係ないし)

そこから僕も局長もすこし距離が離れた気がする。

やがて受験時期になり、

僕は兄が通っていた旭丘高校を目指すと宣言した。

しかし、担任とレベル調整するうち

藻岩高校になり、最後に月寒高校になり、

月寒高校に合格して通うこととなった。

受験の日に保険の先生が局長に似ていて

「絶対ここに入る」と気持ちを入れたことを覚えている。

 

しかし、

局長も、かっちゃんも旭丘高校に受かっていた。

いや、それは彼女たちのレベルが

はじめからそこにあったわけで

僕がきっかけではないと思う。

が、そうだったらどうしようとも思ったことがある。

やがて高校が別々になった局長とは疎遠になり、

好きな人ができたら何をすべきかうすうすわかってきた僕は

しかし時間の経過を理解できずにいるまま、

また恋愛ベタなままで

ついに彼女と再会することすらできなかった。

ただかっちゃんとは

家が向かい同士なので

彼女が津田塾大学にいくまではちょっとしたガールフレンドだったかもしんない。

僕の浪人中になぜだかマフラーを編んでくれたりしたしね。

お返しにブレスレットをあげたことも覚えてる。

心の中で「その意味は I wanna hold your hand だったりして!」と口には出さずただ思ってたりして。

ただ受験の際、彼女に会いに行った僕は

東京で粉砕してしまった。

 

中学校の時は身長は140センチなくてどこから見ても小学生。

そんな僕に恋は無理だった。

高校の時は

まあ、モエの話もあるように学校内での浮いた話もあったが

いずれにせよ恋愛下手で恋すらできない男だった。

 

でも

いつもそこに運命的なものがある。

ただ阿呆な僕は

その運命からほされていたのだろう。

 

もし運命を感じたら

全力で恋愛以外であっても

自分のものにしなきゃダメなんだね。

でなきゃ

ただ川のように、面白い話が流れていく。

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